
美しい星空の下で深呼吸をしたことはありますか?満天の星は、私たちに宇宙の広大さを感じさせ、日々の悩みを忘れさせてくれます。しかし、近年、この美しい夜空が失われつつあることをご存知でしょうか?
人が安心して暮らせるよう、家の中も、外も照明に照らされるようになった現代。
この人の作り出した過度な明かりによって星空が見えなくなることを「光害(ひかりがい)」と言います。
この「光害」によって、様々な生き物が影響を受けているのです。
今回は、「光害」について見ていきましょう。

光害とは?
光害とは、人工的な光が過剰に照らされることで、夜空が明るくなり、 星が見えにくくなる現象のことです。街灯やネオンサイン、建物の照明など、私たちの生活を便利にするための光が、自然の暗闇を侵食しているのです。
光害がもたらす影響
光害は、私たちの生活に様々な影響を与えています。
例えば、私たちの健康や生活の質。過剰な光は睡眠障害を引き起こし、体内時計を乱す原因となります。特に青白いLED光はメラトニンの分泌を抑制し、睡眠の質を低下させ、うつ病や生活習慣病のリスクを高める可能性があります。これにより、慢性的な疲労やストレスが増加し、長期的には心疾患やその他の健康問題を引き起こすリスクが高まります。
それに、不要な照明は、貴重なエネルギーを無駄に消費します。地球温暖化の原因となる二酸化炭素の排出量を増やし、環境問題にもつながります。
光害の影響は人だけではありません。
光害は動植物の生態系にも深刻な影響を与えます。例えば、夜行性の動物は光害によって生活リズムが乱され、餌を求める活動が制限されることがあります。
さらに、植物の光合成のリズムが狂うことで、成長に悪影響が出る場合もあります。

光害が与える具体的な影響の事例
光害は、様々な生物の生存を脅かしています。影響を与えている生物を、いくつか具体的に見てみましょう。
ウミガメ
ウミガメは、産卵のために海岸に上陸し、生まれた子ガメは一生懸命に海に向かっていきます。
しかし、沿岸部の光害は、子ガメたちの行動に大きな影響を与えています。
例えば、子ガメは、月の光を頼りに海を目指しますが、人工的な光に惑わされ、陸地の方へ進んでしまうことがあります。結果、脱水症状を起こしたり、捕食者に襲われたりして命を落とすケースが増えています。
また、光害は、ウミガメの産卵場所となる静かで暗いビーチを減少させています。人工光は、メスが産卵場所を選ぶ際の判断を妨げ、産卵数が減少する可能性も指摘されています。

渡り鳥
渡り鳥は、地球上の広大な範囲を移動しながら生活しています。
その移動の中で、星や月の位置を頼りに方向を定めています。しかし、光害によって夜空が明るくなると、これらの天体が見えにくくなり、航路を誤る可能性があります。
また、人工光は、渡り鳥の体内時計を乱し、繁殖行動や子育てに悪影響を与える可能性もあるのです。
それに、高層ビルの窓や照明に引き寄せられて衝突し、死亡する渡り鳥が増加していることもわかっています。
昆虫
昆虫は、生態系において重要な役割を担っています。この昆虫にも光害は多大な影響を与えています。
多くの昆虫は、光に集まる習性があります。人工光に引き寄せられた昆虫は、捕食者に捕食されたり、エネルギーを消耗したりして、個体数が減少する可能性があります。
そして、昆虫の減少は、植物の受粉や、他の動物の食料源の減少につながり、生態系のバランスを崩す可能性があります。
光害に対する取り組み
光害問題に対して、世界中で様々な取り組みが行われています。
日本:美星町
岡山県井原市美星町は 、日本でも有数の星空観測地として知られています。1988年に国内初の光害防止条例を制定し、街灯の明るさや種類を厳しく制限することで、美しい星空を守ってきました。世界の天文学者、環境学者らを中心に公害問題に取りむダークスカイ・ジャパン(国際ダークスカイ協会) から、2018年には「星空保護区」に認定され、その取り組みが世界的に評価されています。
アメリカ:アーチーズ国立公園
ユタ州にあるアーチーズ国立公園は、独特の赤い岩で知られる自然保護区です。この公園では、夜空を守るために、人工光源の種類や設置場所を厳しく制限する取り組みが行われています。その結果、アーチーズ国立公園は、国際ダークスカイ協会から「国際ダークスカイパーク」に認定されました。

イタリア:アルチェヴィオ
イタリア北部にあるアルプス山脈の麓に位置する小さな村アルチェヴィオは、住民が自発的に光害防止に取り組み、照明の向きを調整するなど行いました。その結果、2016年に国際ダークスカイ協会から「星空保護区」に認定されました。
光害防止は、一朝一夕にできるものではありません。ですが、照明の種類や設置場所を制限するなど、具体的な行動を起こすことが重要です。
光害に対して、私たちにできること
光害に対して、私たち個人ができることは多くあります。
照明を見直す
まず、家庭やビジネスで使用する照明を見直し、調光が容易で適切に使用する事で光害の軽減に効果的なLED照明を選ぶことが重要です 。また、照明の設置場所や角度を工夫し、必要以上に広がらないようにすることも大切です。例えば、街灯や庭の照明は下向きに設置し、光が空に広がらないようにすることで、光害を軽減できます。
不要な時間、夜間の使用は控える
夜間に使用する照明の時間を制限し、不必要な時間には消灯するように心がけましょう。これにより、エネルギーの節約にもつながります。地域コミュニティでも、光害に対する意識を高めるためのイベントや教育プログラムを実施することが有効です。
地域への働きかけ
星空を守るための市民運動や政策提言に参加することも一つの方法です。地方自治体に対して、光害対策の強化を求める声を上げることで、公共の場所における光害削減が進むでしょう。

このように、光害対策として私たち一人ひとりができることは多く、私たちの小さな行動から対策を始めることができます。私たち人間にとっては便利な照明ですが、他の生き物にとってはそうではありません。
この機会に日常生活の中で意識を高め、持続可能な未来のために行動していきましょう。
小さな行動が大きな変化をもたらす力になります。共に、持続可能な未来を築いていきましょう。

参考
https://www.nacsj.or.jp/2021/06/26238/
https://darksky.jp/
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/23/042800216/
https://globe.asahi.com/article/15479202
https://ethicalize.co.jp/newsdiary/240426/
https://times.abema.tv/articles/-/10148811
https://zenhoken-std.sakura.ne.jp/ZHJ_pdf41-50/ZHJ50_25-40.pdf
https://www.toyo.ac.jp/link-toyo/life/hikarigai/
https://tvilight.com/ja/%E5%85%89%E5%AE%B3%E3%81%8C%E7%94%9F%E7%89%A9%E3%81%AB%E4%B8%8E%E3%81%88%E3%82%8B%E5%BD%B1%E9%9F%BF/
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/24/080800426/
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