前回、イタリアにおける修道院の歴史についてお届けしました。
最古の薬局「サンタ・マリア・ノヴェッラ薬局」の当時の修道士たちは薬草を栽培し、研究を重ね、治療薬の精製、薬草酒の製造から香りの研究まで、医薬として優れた知的活動が行われていました。
今回はその修道院とハーブの関わりを見ていきましょう。
ハーブの研究はいつから?
薬草を栽培し薬剤を調合、研究を重ねながら薬局にまで発展させた修道士たちはどうしてハーブを薬として、またコスメにしようと考えていたのでしょうか?
ハーブは修道士が研究をしていた13世紀よりもはるか昔、メソポタミアや古代エジプトの時代から薬用や調理用アイテム、防腐剤として用いられていたそうです。
そしてイタリアを中心としたローマ帝国がヨーロッパやアフリカ北部、アジア西部に広大な領土を支配し、それと同時にローマ帝国内各地にハーブも広まり、当時の人々の生活の中に徐々に浸透していくこととなります。
当時、メソポタミアや古代エジプトの伝統を引き継ぎながらのハーブ栽培と、ローマ帝国のキリスト教の採用。それが更なるハーブの採取の掟や利用法などが決められ、キリスト教の教えに基づく修道院での修道士たちの共同生活の中で盛んに栽培され、その後、大いなるハーブ研究が進められて行くこととなります。
ハーブのパワー、殺菌消毒効果
ハーブを使った薬草浴もローマ帝国時代の話。
映画にもなっていたように、確かに、ローマ帝国時代には日本の温泉や銭湯のように、大入浴場がありました。
ローマ市民は公衆浴場に出かけ、ハーブを使ってアカスリやハーブオイルマッサージなどが行われていたとのこと。
私たちがお風呂に入浴剤を入れたり、入浴後のマッサージなどの原点がこの時代から垣間見られるのです。
また、長年にわたり中世ヨーロッパで大流行したペスト。
多くの感染者が出て、ペストの病に苦しんでいた時に、ペスト除けとしてハーブが大活躍したそうです。
免疫力や殺菌作用にも効果があるとされるローズマリーやセージが、多くの人々の命をペストから救ったとも言われています。
こんなにもペストが大流行したヨーロッパですが、ハーブの精油を扱う商人や財産を盗む窃盗グループがペストにかからなかったとか。
ちなみにこの窃盗グループ、セージ、ローズマリー、タイム、ミント…などの殺菌効果の高いハーブを全身に塗ったり、口に含んだりしながら窃盗を繰り返し、警察に捕まった際にもどうしてペストにかからなかったのか、それはハーブのおかげ、と正直に白状したそうです。
古代文明時代から認められていたハーブのパワーはイタリアを中心とした様々な修道院で修道士たちの研究の元、様々な発見があり、ヨーロッパ貴族のみならず、一般市民にも手の届く、誰にでも平等であり、自然の力を秘めたハーブ療法として人々の生活の中に欠かせないものとなったことは言うまでもありません。
自然療法と化学療法の現代へ
古代エジプト時代から長い歴史のあるハーブ。
そしてイタリアの修道院ではハーブの研究や開発がなされ、薬草として様々な治療にも使われ、その中でも伝染病のペストから多くの人たちを守る実績もある中、西洋医学はどんどん進んでゆき、ペストだけでなく、更なるウィルス性の病気の流行もある中、抗生物質が発見されるなど、薬を使った化学療法がヨーロッパから世界に浸透して行く近代へと変化していきます。
しかしながら、薬学の素晴らしい発展に反し、ウィルスもあらゆる形で変化、進化し、現在ではウィルスに対抗できるような更なる薬学の研究が進められているのも現状です。
そのような中、化学療法では治療が難しい病気も多くなりました。
ストレス性疾患や、生活習慣から来る病なども現代を代表する病気です。
病気にならないような食生活、社会生活の見直しとともに、自然療法として再度ハーブ療法が見直されています。
原点に戻り、自然の力の恩恵にあやかろう
現在では大気汚染、環境破壊、自然破壊、などの言葉をよく耳にします。
便利になった時代であり、様々なものが手に入り、不自由がなくなった時代でもありますが、私たちには常にのしかかってくるストレスが多い時代でもあります。
しかしながら、修道士たちが薬草の研究をしていた時代は、大気汚染は無く、環境破壊も自然破壊も無い時代。
物が溢れているわけでなく、きっと不自由な中、試行錯誤しながらあらゆる研究を重ねていたことと思われます。
そんな中でのあらゆる作業はきっと私たちと同様にストレスは感じられたことでしょう。
しかしながらそのストレスを、ハーブを使った自然療法で取り除いていたのだと思います。
今でもイタリアの有機栽培ハーブは昔ながらの農法を尊重しつつ、質の良い素晴らしいハーブを育て、そして伝統的な採取や抽出を重んじ、フレグランスやコスメとして精製されています。
修道士たちの熱心な研究を振り返り、原点に戻って自然の恵みに頼ってみませんか?
きっと明日への大きな一歩につながることと思います。
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